紅葉の仕組みを知って秋をもっと楽しもう!

♦︎色彩豊かな日本の紅葉、その美しさのひみつ♦︎

秋の楽しみといえば「紅葉(もみじ)狩り」があります。毎年秋になると、多くの人が紅葉の美しさを楽しみにしていて、「今年はいつが見頃だろう?」と天気予報の紅葉情報をチェックします。日本では紅葉がとても親しまれていて、日本の気候が豊富な雨をもたらすため、いろいろな木々が混じり合って育っています。秋になると、落葉広葉樹の葉が赤や黄色に変わり、紅葉や黄葉が見られます。一方で、常緑樹はいつもと同じ緑色のままです。海外の紅葉は単色が多いですが、日本の紅葉はカラフルで、その美しさから世界一といわれることもあります。

日本には落葉広葉樹がたくさんあり、欧米には13種類ほどしかないのに対して、日本には26種類もあります。そのため、赤、黄色、オレンジ、そして常緑樹の緑が混じり合った、まるで錦のような色鮮やかな紅葉が楽しめます。

植物の葉が緑色なのは、「クロロフィル(葉緑素)」という緑色の色素があるからです。植物は根から水を吸い上げ、クロロフィルが太陽の光を利用して二酸化炭素と水から栄養分を作り出し、酸素を放出します。これが「光合成」という働きです。

常緑樹に比べて、落葉広葉樹の葉は薄くて広いです。春や夏は気温が高く、太陽の光もたくさんありますので、葉を広げて光合成を活発に行います。しかし、秋から冬になると太陽の光が弱くなり、日照時間も短くなります。また、気温も下がるので、光合成を行うのが難しくなります。そのため、落葉広葉樹は冬に葉を落として、幹に栄養を蓄えて冬を越えます。

では、どうして葉の色が変わるのでしょうか?葉には、クロロフィルの他に「カロチノイド」という黄色い色素も含まれています。クロロフィルがたくさんある春や夏は、緑色が目立ちますが、秋になると気温が下がり、光合成が衰えるため、クロロフィルが分解されます。そうすると、葉の中に残っているカロチノイドの黄色が目立つようになり、これが黄葉となります。

イチョウの葉では、黄葉(こうよう)という黄色に変わる現象が見られます。一方で、モミジやカエデなどの葉が赤くなる「紅葉(こうよう)」は、少し違った仕組みです。紅葉する葉の中では、「アントシアニン」という新しい赤い色素が作られます。葉緑素(クロロフィル)が分解されて緑色が消えた後も、黄色の色素「カロチノイド」は残っていますが、アントシアニンがさらに葉を赤くする役割を果たしています。このアントシアニンは、植物が少しでも多くの栄養を幹に戻し、冬を乗り越えるために作られます。

 

「今年の紅葉はきれいだ」と聞くことがあるかもしれません。紅葉の美しさは、次の3つの条件で決まると言われています。

1. 日中の天気が良いこと

赤い色素のもととなる糖分は、光合成で作られるため、日中に太陽の光がたくさん当たると、きれいな紅葉が期待できます。

2. 適度な雨や水分

乾燥しすぎると、葉が紅葉する前に枯れてしまいます。適度に雨が降り、水分があると、紅葉が美しくなります。

3. 昼と夜の温度差が大きいこと

一般的に、最低気温が8℃以下になると紅葉が始まります。朝の気温が5℃以下の日が続くと、一番美しい紅葉が見られると言われています。昼と夜の温度差が大きいと、植物が昼に作った糖分を使わずにすみ、より鮮やかな赤い紅葉が楽しめます。

 

私たちが見て美しいと感じる紅葉は、植物にとっては冬を乗り越えるための大事な準備です。紅葉した葉は、枝と葉の間に「離層(りそう)」という仕切りができ、水分や栄養が行き来しなくなり、最終的に葉は落ちます。

日本各地には、紅葉の名所がたくさんあり、年によってその美しさが変わることも話題になります。今年も紅葉の季節がやってきました。日本の自然が見せてくれる奇跡ともいえる紅葉を、あなたはどこで楽しみますか?